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なぜ院長と歯科衛生士はすれ違うのか|現場の構造と3つの改善軸

コラム

2025/12/08

 

 

 

なぜ院長と歯科衛生士はすれ違うのか|現場の構造と3つの改善軸

 

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1. 概要

 

 

院長と歯科衛生士の間には、経験年数に関係なく「価値観のズレ」が生まれやすい。

その背景には、業務構造・教育体制・患者観の違いがある。

本記事では、厚労省データや学会報告を踏まえながら、すれ違いが起きる理由を整理し、勤務者が実務で使える改善軸を提示する。

 

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2. はじめに

 

 

同じ患者を診ているのに、どこか考えが噛み合わない。

「院長は数字ばかり見ているように感じる」

「衛生士の提案が通らない」

そうした声は、外来・訪問に関係なく少なくない。

 

現場で働く衛生士ほど、“患者の時間”を最前線で受け止めている。だからこそ、医院全体の運営を見ている院長との間に、思いもよらない溝が生まれることがある。

 

このすれ違いは、個人の性格の問題ではなく、構造が生み出す必然である。

まずは、その事実から整理していきたい。

 

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3. 本文

 

 

 

【① 現場で起きている“すれ違い”の実態】

 

 

厚生労働省の調査では、歯科衛生士の離職理由に「人間関係」が上位に挙がる。

その中でも、最も多いのが院長との価値観のズレである。

 

現場では、次のような声がよく聞かれる。

 

・提案しても「あとで」で流される

・患者対応の時間をもっと確保したいが、予約が詰め込まれる

・技術研修を希望しても優先順位が低く扱われる

・スタッフの動線改善を申し出ても通らない

 

一方の院長側には、また別の悩みがある。

 

・人件費・材料費の管理に追われる

・治療の進行と経営の両立に常にプレッシャーがある

・スタッフの意見を聞きたくても、時間が取れない

・業務の優先順位が院長とスタッフで違う

 

この「視点の違い」が、双方の誤解を自然に生み出している。

 

 

 

 

【② なぜこの構造が生まれるのか:専門的な分析】

 

 

 

● 1. 患者を見る“時間軸”が違う

 

衛生士は1回の予約枠を使い、患者の生活変化まで含めて細かく観察する。

院長は医院全体の1日・1ヶ月の動きを見て判断する。

 

時間軸が違うため、優先順位も異なる。

これは決してどちらが正しい、ではない。

 

 

● 2. 情報量の差

 

院長は医院全体の数値、トラブル、経営リスク、法的責任まで見ている。

衛生士は臨床現場での患者接点を最も濃く把握している。

 

どちらも正しいが、共有されなければズレが生まれる。

 

 

● 3. 教育設計の不一致

 

多くの医院では“暗黙知”で動いている。

マニュアルの不整備は、院長も衛生士も混乱を生みやすい。

指導者が固定されず、評価基準も曖昧。

結果として「何を目指すか」が一致しない。

 

 

● 4. “治す”と“支える”の役割の違い

 

院長:主訴への治療、経営判断、医院運営

衛生士:予防、生活支援、コミュニケーション

双方の役割は補完関係にあるが、

立場の違いがそのまま価値観の差となる。

 

 

 

 

【③ 視点の転換:院長側から見える景色】

 

 

衛生士からは見えにくいが、院長は常に複数の負荷を抱えている。

 

・経営悪化による給与支払いの責任

・トラブル対応やクレームの最終責任

・保険制度の改定リスク

・人材確保の困難さ

 

これらは日常の中で外からは見えにくい。

 

一方で、院長が現場の小さな変化や衛生士の心理負担を見逃す理由もここにある。

双方が「見ている世界」が違うため、対話の接点が少なくなってしまう。

 

 

 

 

【④ 実務で使える“3つの改善軸”】

 

 

 

1. 

情報を“成果”で共有する

 

ただの意見ではなく、

・患者満足

・業務効率

・再来患者の質

に結びつく提案は通りやすい。

 

例:

「見逃し防止のために口腔写真を一定基準で揃えたい」

→ 自費治療の説明精度が上がり、チェアタイムも短縮。

 

院長は“医院全体の成果”を見るため、そこを軸に会話すると一致しやすい。

 

 

2. 

小さな提案を“期間限定で試す”

 

「まず1ヶ月だけ」

「曜日を限定する」

「担当患者で試す」

こうした提案は院長がリスクなく判断しやすい。

 

 

3. 

定期的な“15分だけの共有時間”

 

毎回長時間は不要。

月1回/15分で十分。

業務改善の進捗や気づきの共有をすると、対話の質が劇的に変わる。

 

特に30代以降は、「任される側」から「医院づくりに参加する側」へ視点を切り替えると、働き方の幅が広がる。

 

 

 

 

4. まとめ

 

 

院長と衛生士のすれ違いは、個人の性格ではなく“構造的な必然”である。

 

・時間軸の違い

・情報量の差

・教育設計の不足

・役割の違い

 

これらを理解すると、日々の不満の原因が整理される。

そして、成果ベースで意見を出す・短期間トライで提案する・定期共有をすることで、現場の空気は大きく変わる。

 

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5. 最後に

 

 

働き方は「自分の力がどれだけ活かされるか」で決まる。

院長との関係が少し良くなるだけで、毎日の患者対応の質と自己効力感は大きく変わる。

そして、新しい働き方を試したいときは、スポット勤務を活用すると視野が広がる。

 

歯科業界の多様な働き方に触れたい方は、下記から確認いただける。

https://skill-share-hub.com/

 

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出典

 

 

・厚生労働省「医療従事者の就業実態調査」

・日本歯科衛生士会 人材定着・離職調査

 

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